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子会社設立の必要書類:社内決裁・定款認証・登記の三つの束で、親会社が用意するもの

文:『子会社設立の実務ノート』編集部 / 掲載

この記事の前提
親会社上場・非上場の両方(上場会社は開示資料の段落を分ける)
出資100%子会社(親会社1社が発起人)。共同出資は注記
つくる先国内の株式会社を発起設立(取締役会設置会社を例に)
子会社設立の必要書類:社内決裁・定款認証・登記の三つの束で、親会社が用意するもののアイキャッチ

想定している読み手

子会社設立の担当になり、「必要書類の一覧をつくって」と頼まれた親会社の総務・法務の担当者に向けた記事です。個人が会社をつくるときの書類ではなく、発起人が会社であることで増える書類と、親会社の社内でそろえる決裁書類に重心を置きます。

必要書類は提出先で三つの束に分ける

書類は提出先で三つに分ける。社内・公証役場・法務局で束をつくる

子会社設立の必要書類を一つの表に並べると、項目が多すぎて、誰が何をいつまでに用意するのかが見えなくなります。おすすめしたいのは、提出先ごとに三つの束に分ける整理の仕方です。一つ目は親会社の社内で決めるための書類、二つ目は公証役場で定款の認証を受けるための書類、三つ目は法務局に出す設立の登記の添付書面です。

法務省の「株式会社の設立手続(発起設立)について」は、定款の作成と認証、出資の履行、設立時取締役等の選任、設立の登記の申請という順で手続を説明しています。三つの束は、この流れの前に親会社の社内の決裁を一つ足したものと考えると分かりやすいでしょう。束ごとに提出先と期限が違うので、担当者も分けやすくなります。

図:子会社設立の必要書類の三つの束

個人がはじめて会社をつくるときの必要書類の一般論は、必要書類を専門に扱う姉妹サイトの担当なので、ここでは扱いません。このページでは、発起人が親会社であることで増える書類と、親会社の社内でそろえる書類に絞って見ていきます。

社内の決裁書類:稟議・経営会議資料・取締役会議事録

社内で決める書類。付議基準に沿って稟議と議事録を残す

一つ目の束は、親会社が子会社をつくると決めたことを示す書類です。どの機関で決めるかは、親会社の取締役会規程や決裁権限規程の付議基準によります。会社法362条4項は、取締役会設置会社で取締役に委任できない重要な業務執行の決定として、重要な財産の処分及び譲受けや、支店その他の重要な組織の設置などを挙げていますが、子会社の設立がそのいずれに当たるかは出資額や事業の重要性で変わり、一律には決まりません。

書類 中身の例 残す理由
稟議書・起案書 設立の目的、事業計画、出資額、役員候補 決裁の経緯と承認者を示す
経営会議の資料と記録 検討の過程、論点、修正意見 方針が固まった時点を示す
取締役会の議案と議事録 設立の決議、定款案、出資の承認 機関決定の記録になる
印章使用の申請 定款・同意書などへの押印の承認 誰がいつ押したかを示す

書類の名前と組合せは親会社の規程で変わります。

経営会議と取締役会の二段階で決める会社では、経営会議の段階で設立の方針が実質的に固まることがあります。上場会社の場合、その時点が開示の判断の起点になりうるため、経営会議の資料と記録も、取締役会議事録と同じように日付つきで保存しておきます。

取締役会で決議した場合、議事録は親会社の書類として、取締役会の日から10年間、本店に備え置きます(会社法371条1項)。子会社の設立の登記の添付書面には、通常、親会社の取締役会議事録は含まれません。だからといって手を抜いてよい書類ではなく、子会社の資本金や役員、定款の目的が、議事録で承認された範囲と一致しているかを後から確かめる拠り所になります。

共同出資で子会社を設立する場合は、相手方の会社でも同じ束の決裁書類がつくられます。双方の決裁が済んだことを確かめないまま定款認証に進むと、相手方の承認が下りなかったときに書類をつくり直すことになります。株主間契約の締結の決裁も含め、相手方の承認の予定日を聞いておき、自社の日程表に書き込んでおきます。

稟議書や議案の資料には、定款案と、子会社の設立事項をまとめた一覧を添付しておくと便利です。定款認証や登記の段階で数字や表記が変わったときに、承認の範囲内の変更なのか、承認をやり直すべき変更なのかを、資料と突き合わせて判断できます。

出資の決裁と払込みの記録

出資の決裁と払込みの記録。支払の承認から払込みを証する書面まで

親会社が子会社の株式を引き受けると、出資の履行として金銭の全額を払い込みます。会社法34条1項は、発起人は設立時発行株式の引受け後遅滞なく、出資に係る金銭の全額を払い込まなければならないとし、同条2項は、その払込みは発起人が定めた銀行等の払込みの取扱いの場所においてしなければならないとしています(2026年10月18日、条文原文確認)。

親会社の社内では、この払込みのために支払の決裁が必要です。出資額を承認した決議とは別に、経理部門の支払の手続を通すことになるため、支払申請書、払込先の口座の情報、承認者の記録がそろっているかを確かめます。払込先は、発起人が定めた口座で、設立時代表取締役となる人の口座などが使われることが多いため、口座の名義と振込の名義(親会社)を記録に残しておきます。

支払申請
出資額・払込日・払込先口座を記載し、経理の承認を得る
振込の控え
親会社の名義で、定めた口座へ全額を払い込んだ記録
口座の写し
入金が分かるページ。払込みを証する書面に使う
払込みを証する書面
設立時代表取締役が作成した証明書に口座の写しなどをとじる

法務局の案内では、払込みを証する書面として、払込金受入証明書、又は設立時代表取締役が作成した払込みを受けたことを証明する旨の書面に預金通帳の写しや取引明細票をとじたものなどが挙げられています。親会社の経理部門が振込を行い、子会社の代表者が証明書をつくる、という分担になる点を、両方の担当者に伝えておきます。

定款認証で親会社が出す書類

定款認証で親会社が出す書類。登記簿謄本と代表者の印鑑登録証明書

二つ目の束は、公証役場で定款の認証を受けるための書類です。日本公証人連合会の定款認証のQ&Aは、発起人の印鑑登録証明書は発行後3か月以内のものに限られるとしたうえで、会社が発起人の場合には、代表者の印鑑登録証明書のほかに会社の登記簿謄本が必要と案内しています(2026年10月18日確認)。親会社が発起人なら、親会社の登記事項証明書(登記簿謄本)と、親会社の代表者の印鑑証明書を用意することになります。

あわせて、認証の嘱託人は、子会社の成立の時に実質的支配者となるべき者を公証人に申告します。公証人連合会は、認証を受けたい定款の案と実質的支配者となるべき者の申告書を事前に公証役場へ送付し、事前調査を受けるよう案内しています。親会社が上場会社か、非上場で特定の株主が支配しているかによって、申告の内容と根拠資料が変わります。

チェックリストの図:定款認証の書類をそろえる前の確認

公証人連合会は同じ箇所で、会社が発起人となる場合には、新会社の発起人となることが発起人となる会社の目的の範囲内でなければならず、新会社の目的の一つと重なっていることを確認すると説明しています。親会社の登記事項証明書は、この確認にも使われます。目的の重なりの考え方は子会社設立の定款のカテゴリーで扱っています。

登記の添付書面と、親会社がどこまで関わるか

登記の添付書面と親会社の関わり。作成者と押印者を一覧にする

三つ目の束は、子会社の設立の登記に添付する書面です。法務局の取締役会設置会社の発起設立の案内に沿って、書面ごとに誰が作成し、親会社がどう関わるかを並べると、次のようになります(2026年10月18日確認)。

添付書面 作成・押印する人 親会社の関わり
認証を受けた定款 発起人(親会社) 作成者そのもの
発起人の同意書・決議書 発起人(親会社) 株式数・本店所在場所などを決める
就任承諾書 設立時取締役・監査役 役員になる社員に依頼する
設立時代表取締役の印鑑証明書 本人が市区町村で取得 兼務者なら予定を押さえる
本人確認証明書 印鑑証明書を出さない役員 住民票記載事項証明書などの取得を依頼
払込みを証する書面 設立時代表取締役 親会社の振込の記録を渡す

このほか、登記すべき事項を記録した電磁的記録、委任状、印鑑届書などが要ります。印鑑届書には作成後3か月以内の印鑑証明書を添付します。

就任承諾書を出す役員が親会社の役員や社員である場合は、親会社の側でも兼務や出向の承認が要ることがあります。親会社の取締役が子会社の取締役を兼ねる、親会社の社員が子会社の監査役に就く、といった場合に、どの規程で誰の承認を得るかを人事部門と確かめます。登記の書類とは別の束ですが、就任の承諾の前に済ませておきたい社内の手続です。

表から分かるように、親会社の登記事項証明書や代表者の印鑑証明書は、この添付書面の一覧には載っていません。親会社の証明書が主に使われるのは定款認証の段階です。登記と認証の書類を一つの表に混ぜると、証明書を何通取ればよいかが分からなくなるため、束を分けて管理します。なお、商業登記法19条の3は、登記の申請書に添付すべき登記事項証明書は、申請書に会社法人等番号を記載した場合などには添付を要しないとしています。

登記の流れ、登録免許税、設立日の決め方は子会社設立の登記のカテゴリーで、親会社が発起人になるときに増える書類の詳細は発起人のカテゴリーで扱っています。登記申請書そのものの書き方は、登記・定款を専門に扱う姉妹サイトの担当です。

証明書の取り寄せ:誰が、いつ、何通

証明書を取る日を決める。認証の予約が固まってから取得する

必要書類の準備で意外に時間をとられるのが、証明書の取り寄せです。親会社の登記事項証明書は法務局の窓口やオンラインで請求できます。代表者の印鑑証明書もオンラインで請求でき、郵送のほか、窓口での受取も選べますが、法務局は、印鑑証明書を受け取る際には必ず印鑑カードを窓口で提示するよう案内しています(2026年10月18日確認)。印鑑カードを管理している部署が別なら、受取の日を事前に調整しておきます。

取得の時期は、認証の予約が固まってからにするのが無難です。公証人連合会の案内では、印鑑登録証明書は発行後3か月以内のものに限られています。社内の決裁が長引いて認証の日が後ろにずれると、先に取った証明書が使えなくなることがあります。

時系列の図:証明書の取り寄せの順番(例)

子会社の役員になる人の証明書は、本人が自分で取り寄せるものです。親会社の総務が代わりに市区町村へ請求するものではないため、本人に依頼する書類の一覧と期限を早めに渡します。役員が海外に駐在している場合などは、日本の印鑑証明書が取れないこともあるため、どの書類で代えられるかを依頼する司法書士に確かめておきます。

通数も決めておきます。認証用の分に加えて、銀行や取引先に親会社の情報を示す必要がある場合はその分を、共同出資なら相手方の会社の分も見込んでおきます。取り寄せた日と使った先を一覧に記録しておくと、期限切れや取り直しの判断がすぐにできます。

上場会社の親会社が追加でそろえる書類

上場会社が追加でそろえる書類。開示資料と情報管理の記録

上場している親会社では、三つの束に加えて、開示のための書類が必要になることがあります。東京証券取引所の会社情報適時開示ガイドブックは、子会社等の異動を伴う事項を決定し、軽微基準等の判定を経て開示の対象となる場合に、決定した時点での開示を求めています。子会社の設立のお知らせの原稿、軽微基準の判定の記録、社内の承認の記録は、開示担当部署と一緒にそろえる書類です。

開示より前の段階では、設立の検討に関わる人の範囲を記録しておく書類も役に立ちます。誰に定款案や事業計画を回したかの記録、外部の専門家との秘密保持の取り決めなどです。どの情報が重要事実に当たりうるかは、社内の担当部署と弁護士に確認してください。

子会社の設立を決めた後、設立のお知らせで示した内容と、定款認証や登記の段階での内容がずれることもあります。商号の表記や資本金の額、設立の予定日が変わった場合に、訂正の開示が要るかどうかを判断できるよう、開示した原稿と最終の書類を並べて保管しておきます。

上場している親会社

  • 開示の原稿と軽微基準の判定記録
  • 関係者の範囲の記録・秘密保持の取り決め
  • お知らせに書く設立日を登記の予定と照合

非上場の親会社

  • 取引所の開示書類は要らない
  • 取引先・金融機関への説明資料
  • グループ内通知の文面と配布日

まとめ:書類の一覧は「提出先」と「作成者」の二つの列で

提出先と作成者で一覧にする。三つの束に分け、作成者と期限を書く

子会社設立の必要書類の一覧は、提出先と作成者の二つの列を持たせると、担当の割り振りと期限の管理が一度にできます。親会社の社内の書類は親会社が保管し、定款は子会社の成立後、子会社の本店と支店に備え置かれます(会社法31条)。設立の後も、書類は子会社と親会社の双方で使われ続けます。

  • 必要書類は、社内の決裁・定款認証・登記の三つの束に分ける
  • 社内の決裁書類は付議基準に沿って残し、取締役会議事録は10年間備え置く
  • 出資は支払の決裁を通し、払込みの記録を子会社の代表者に渡す
  • 定款認証では親会社の登記事項証明書と代表者の印鑑証明書(3か月以内)を出す
  • 登記の添付書面には、親会社の証明書は通常含まれない
  • 証明書は認証の予約が固まってから取り、取得日と使った先を記録する

一覧をつくるときのこつは、書類の名前だけでなく「その書類で何を証明するのか」を一言添えることです。親会社の登記事項証明書なら発起人である親会社の存在と目的、代表者の印鑑証明書なら押印の真正、払込みを証する書面なら出資の履行、というように書いておくと、提出先から別の書類で代えられないかと聞かれたときにも判断の手がかりになります。

設立が終わったら、三つの束の写しを一つのフォルダにまとめ、子会社の担当者にも渡しておきます。増資や役員の交代、定款の変更のときに、設立時の書類を探し回らずに済みます。子会社の担当者が替わっても、フォルダの場所と一覧の更新者を決めておけば、履歴をたどれる状態が保てます。

手元の表計算ソフトで、子会社設立の必要書類を「社内」「公証役場」「法務局」の三つのシートに分け、書類ごとに作成者・押印者・取得日・期限の列をつくってみてください。空欄が残った書類が、次に確かめる相手を教えてくれます。認証の書類は公証役場に、登記の添付書面は依頼する司法書士に、社内の決裁の要否は自社の規程と法務部門に確認してください。

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