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子会社設立の定款:親会社が発起人として決める条項と、目的・定款変更の考え方

文:『子会社設立の実務ノート』編集部 / 掲載

この記事の前提
親会社上場・非上場の両方(上場会社は開示の段落を分ける)
出資100%子会社(親会社1社が発起人)。共同出資は注記
つくる先国内の株式会社を発起設立
子会社設立の定款:親会社が発起人として決める条項と、目的・定款変更の考え方のアイキャッチ

この記事を読んでほしい担当者

子会社の設立準備で「定款の案をまとめてほしい」と頼まれた、親会社の法務・総務・経営企画の担当者に向けた記事です。定款の一般的なつくり方ではなく、発起人が会社であることで変わる箇所と、親会社のグループ管理の方針を条項に落とす箇所に絞って見ていきます。

子会社の定款は、親会社が発起人として作成する書類

子会社の定款の作成者は親会社。発起人欄には親会社の名称と本店を書く

子会社の定款は、子会社の担当者が書くものと思われがちですが、設立の段階ではまだ子会社は存在しません。株式会社を設立するには発起人が定款を作成し、その全員が署名又は記名押印します(会社法26条1項)。親会社1社が全額を出資する子会社設立なら、定款の作成者は親会社です。社内で原案を書く部署がどこであっても、最後に責任を持つのは発起人である親会社だという点から出発します。

会社法27条は、株式会社の定款に必ず記載する事項として、目的、商号、本店の所在地、設立に際して出資される財産の価額又はその最低額、発起人の氏名又は名称及び住所の五つを挙げています(2026年10月18日、条文原文確認)。最後の項目に「名称」とあるのは、発起人が法人であることを想定した書き方です。子会社の定款では、ここに親会社の商号と本店を、登記事項証明書の表記どおりに写します。

図:定款の絶対的記載事項と、親会社が子会社設立で確かめる点

定款は株主総会の決議で変更できる会社の根本規則ですが、子会社の場合は「親会社が子会社をどう管理したいか」を最初に書き込む場所でもあります。たとえば株式の譲渡を制限するか、取締役会を置くか、監査役を置くかといった条項は、親会社のグループ管理の方針がそのまま表れます。個人がはじめて会社をつくるときの定款の一般論は、登記・定款を専門に扱う姉妹サイトの担当なので、ここでは触れません。

公証人の認証の場面でも、発起人が会社であることは表れます。公証人連合会は、会社が発起人の場合には代表者の印鑑登録証明書のほかに会社の登記簿謄本が必要と案内しています。定款の案ができたら、親会社の証明書を取る時期も一緒に決めておくと、認証の予約から逆算した段取りが組めます。

複数の会社が出資し合う形の子会社設立では、発起人も複数になり、定款の中身は各社の合意で固まります。出資比率や役員の指名権を株主間契約で決め、その一部を定款に反映させる形が多いため、どの合意を定款に書き、どれを契約にとどめるかを、各社の法務と弁護士で詰めておきます。

親会社と子会社の定款の目的は、どう重ねるか

子会社の目的と親会社の目的。公証人は発起人会社の目的との重なりを確かめる

定款の条項で親会社の担当者がもっとも迷うのが「目的」です。子会社がすぐに始める事業だけを書くのか、将来の事業まで書くのか、親会社の目的とそろえるのか。手がかりは公証人の側の確認方法にあります。公証人連合会の説明では、法人が新会社の発起人になれるのは、それがその法人自身の目的の範囲に収まる場合に限られます。そのため認証の場面では、子会社の目的のうち少なくとも一つと同じ種類の事業が、親会社の定款にも載っているかが見られます(公証人連合会のQ&Aを2026年10月18日に確認)。

つまり、子会社の定款の目的を考えるときは、子会社の側だけを見ても足りません。親会社の現在の定款を手元に置き、子会社の目的のうち少なくとも一つが親会社の目的と重なっているかを先に見ておくと、公証役場とのやり取りで止まりにくくなります。重なりの見方や、許認可が要る事業の書き方、将来の事業をどこまで入れるかの考え方は、親会社と子会社の定款の目的を照らし合わせる記事で詳しく扱います。

この見出しを詳しく:親会社 子会社 定款 目的子会社の目的の書き方と、親会社の目的との重なりを確かめる手順

目的の文言は、子会社の登記簿にもそのまま載ります(会社法911条3項1号)。取引先や金融機関が子会社の事業内容を確かめるときに最初に見る欄なので、親会社の事業部の言葉ではなく、外の人が読んで分かる表現にしておくことも大切です。

親会社の定款に、子会社の事業がなくてもよいのか

親会社の定款と子会社の事業。法人は定款の目的の範囲内で権利を持つ

前のセクションの裏返しとして、親会社の定款の目的に子会社の事業が書かれていない場合はどうなるかという問いがあります。民法34条によれば、法人が権利を持ち義務を負うのは、法令に従い、定款などで定めた目的の範囲の中に限られます。子会社の株式を持つことや、子会社の経営を管理することが親会社の目的の範囲に入るかは、この規定を出発点に考えることになります。

実務では、親会社の定款に「前各号に附帯関連する一切の事業」といった包括的な号を置いている会社が多く、また子会社の事業の一つが親会社の目的と重なっていれば、公証人の確認とも整合します。一方、まったく新しい分野に子会社をつくる場合や、持株会社として子会社の経営管理そのものを事業にする場合は、親会社自身の定款に目的を追加するかを検討する場面が出てきます。どちらが必要かは事業の中身で変わるため、ここでは断定しません。

この見出しを詳しく:親会社 定款 子会社 事業親会社の定款の目的に、子会社の事業や株式保有を加えるかの判断材料

親会社の目的を追加するには、親会社の株主総会で定款を変更する必要があり、上場会社なら招集の時期や開示の段取りまで関わってきます。判断の材料と、検討の順番は親会社の定款と子会社の事業の関係を扱う記事にまとめています。

商号と本店:親会社の名前を子会社の定款に入れるとき

子会社の商号と本店の決め方。同一商号・同一本店の会社は登記できない

グループ会社の新設では、親会社の名前の一部を子会社の商号に入れることがよくあります。このとき気をつけたいのは、子会社の本店を親会社と同じ場所に置く場合です。商業登記法27条は、他人が既に登記した商号と同一で、かつ本店の所在場所も同一であるときは、その商号の登記をすることができないと定めています。親会社と一字一句同じ商号を同じ本店に置くことはできない、ということです。

反対に、「株式会社」の位置を変えたり、事業を表す語を加えたりして商号が同一でなければ、同じビルの同じフロアに子会社の本店を置くこと自体は珍しくありません。法務省は、申請前に同一商号・同一本店の会社がないかを調べる方法を案内しています。グループで似た商号の会社が増えてきた親会社では、商号を決める段階で一度調べておくと安心です。

商号は子会社の設立後に変えることもできますが、変更には子会社の株主総会の特別決議と変更登記が要り、名刺・契約書・銀行口座の名義まで差し替えることになります。設立の時点で、親会社のブランド管理の担当部署にも案を見せておくと、後からの差し替えを減らせます。

本店の書き方
定款には最小行政区画までを書き、番地は発起人が別に決める方法もある
英字表記
定款に英字の表記を併記するかは、親会社の英文社名との並びで決める
親会社の名前
グループ名を入れるなら、将来その子会社を売却したときの扱いも考える

上場会社の子会社では、商号に親会社の名前が入るだけで、設立の情報が社外に伝わることがあります。商号の候補を検討している段階から、関係者を限った運用にしておくと、開示の時期との整合がとりやすくなります。

機関設計と株式の条項に、親会社の管理方針を書き込む

機関と株式の条項は管理方針。取締役会・監査役・譲渡制限を親会社の規程とそろえる

株式会社には株主総会と取締役を置くことが前提で、取締役会や監査役などは定款の定めによって置くことができます(会社法326条)。100%子会社では株主は親会社だけなので、機関を軽くすれば意思決定は速くなり、重くすれば親会社以外の目が入りやすくなります。どちらを選ぶかは、子会社の規模と、親会社の関係会社管理規程が子会社に何を求めているかで決まります。

条項 軽くした場合 重くした場合
取締役会 取締役1名から。決定は取締役が行う 取締役3名以上。重要事項は取締役会で決める
監査役 置かない。親会社の監査部門が見る 置く。親会社の役員が兼ねることも
株式の譲渡制限 定める(全株式に譲渡承認を要する) 同左。承認機関をどこにするか
事業年度 子会社の事情で決める 親会社の連結決算に合わせる

どの組合せが合うかは子会社の規模・事業・親会社の規程で変わります。表は検討の入口です。

株式の譲渡制限の定めは、100%子会社でも置いておくのが一般的です。親会社以外の者に株式が渡ることを防げるうえ、取締役の任期を伸ばすなどの選択肢にも関わってきます。事業年度は登記事項ではありませんが、連結決算を組む親会社では、子会社の決算期を親会社とそろえるかどうかを経理部門と最初に決めておくと、後から定款を変える手間が省けます。

新会社の設立を急ぐあまり、別の子会社の定款をそのまま複製して使う例も見かけます。ひな形として参考にするのは構いませんが、以前の子会社とは事業も規模も違うはずです。設立の目的に照らして条項を一つずつ見直し、残す理由を説明できない条項は外しておきます。

機関設計の考え方そのものは、会社法のカテゴリーの記事で扱っています。定款の段階で大切なのは、機関設計の結論を条項の言葉に正確に写すことと、親会社の取締役会などで承認された内容と食い違わないことです。

認証を受けた定款は、成立前には原則として変えられない

認証後の定款は成立前に動かせない。例外は会社法30条2項が挙げる場合だけ

子会社の定款は、公証人の認証を受けなければ効力を生じません(会社法30条1項)。そして認証を受けた定款は、株式会社の成立前は、会社法33条7項・9項や37条1項・2項による場合を除き、変更することができないとされています(同条2項)。認証が済んでから「やはり資本金を増やしたい」「目的を一つ足したい」と思っても、原則として認証をやり直すことになります。

親会社の社内では、定款の案が取締役会の資料に添付され、承認された後に認証へ進むのが一般的な流れです。この順番を守ると、承認された内容と認証された内容が一致し、後から説明に困ることがありません。逆に、日程を急いで認証を先に済ませると、取締役会で修正意見が出たときの対応が重くなります。

流れの図:子会社の定款が固まるまでの流れ(例)

設立の日程が厳しいときほど、認証の前に公証役場へ案を送り、目的の表現や発起人欄の表記を見てもらう時間を確保しておくと安全です。子会社の設立を急ぐ理由が事業開始日や契約の締結日にあるなら、その日から逆算して、社内承認・事前確認・認証の三つの日付を先に押さえます。親会社の取締役会の開催日が月1回なら、その日が設立日程全体の節目になります。

発行可能株式総数は、定款で定めていなければ成立の時までに発起人全員の同意で定款を変更して定める必要があります(会社法37条1項)。この変更は認証後でもできる例外の一つです。

子会社の定款変更は、親会社が株主として決める

成立後の定款変更は株主の決定。100%子会社では親会社の同意で決議を省略できる

子会社が成立した後は、定款の変更は子会社の株主総会の決議で行います(会社法466条)。この決議は、議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の多数による特別決議です(会社法309条2項11号。定款で要件を変えている場合を除く)。100%子会社なら株主は親会社だけなので、決議の数の面で迷うことはありません。

それでも手続を省いてよいわけではありません。会社法319条1項は、株主全員が書面又は電磁的記録で提案に同意したときは、株主総会の決議があったものとみなすと定めています。親会社が同意書を出し、子会社がそれを10年間本店に備え置く形にすれば、総会を開かずに定款を変更できます。誰が親会社の同意を決めるのか、親会社の社内でどの決裁を通すのかは、別に整理が必要です。

この見出しを詳しく:子会社 定款変更 親会社子会社の定款変更を、親会社の決裁から変更登記まで順に確かめる

目的や商号のように登記事項になっている条項を変えたときは、2週間以内に変更の登記が要ります(会社法915条1項)。上場会社の子会社では、子会社の商号の変更や、子会社における新たな事業の開始が適時開示の対象項目に挙がっています。軽微基準を含めた判断の手順は、子会社の定款変更を親会社の側から追う記事で扱います。

まとめ:子会社の定款は、親会社の定款と並べて読む

親会社の定款と並べて読む。目的の重なり・承認との一致・成立後の変更手順

子会社設立の定款づくりは、子会社の書類を一から書く作業に見えて、実際には親会社の定款・規程・承認資料と照らし合わせる作業です。親会社が発起人であることを起点に、次の点を確かめておくと、公証役場でも社内でも話が通りやすくなります。

  • 発起人欄は親会社の登記事項証明書の表記どおりに書く
  • 子会社の目的の一つが、親会社の目的と重なっているかを先に見る
  • 親会社の定款に子会社の事業がない場合は、追加の要否を事業の中身で検討する
  • 同一商号・同一本店にならないかを調べ、グループ名の付け方を決める
  • 機関設計と株式の条項は、関係会社管理規程とそろえる
  • 認証後・成立前は原則として変えられないので、社内承認を先に済ませる
  • 成立後の変更は親会社が株主として決め、登記事項なら2週間以内に変更登記

子会社が成立した後、定款は子会社の本店に備え置かれ、株主や債権者は閲覧を請求できます(会社法31条)。親会社の側でも最新版の写しを保管し、変更のたびに差し替える担当を決めておくと、子会社の数が増えても定款の管理が崩れません。登記の流れは子会社設立の登記のカテゴリー、法人が発起人になるときの書類は発起人のカテゴリーもあわせて確かめてください。

次の一歩

子会社の定款の案を書き始める前に、親会社の現行定款・関係会社管理規程・設立を承認する議案の資料の三つを机に並べてみてください。目的の重なり、機関設計、出資額が三つの間で食い違っていないかを確かめたうえで、表記や認証の進め方は公証役場と依頼する司法書士に、条項の法的な判断が要る点は弁護士に確認してください。

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