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人事の棚|特例子会社 ・ 約10分

特例子会社の設立:親会社の人事担当者が最初に押さえる要件・手順・支援の地図

文:『子会社設立の実務ノート』編集部 / 掲載

この記事の前提
親会社上場・非上場の両方(決議と開示の段取りは第8章で分ける)
出資議決権の過半数を持つ子会社(100%子会社が多いが一部出資もありうる)
つくる先国内
特例子会社の設立:親会社の人事担当者が最初に押さえる要件・手順・支援の地図のアイキャッチ

この記事を読んでほしい担当者

法定雇用率の引上げを受けて、経営会議から「特例子会社をつくる案を調べてほしい」と頼まれた親会社の人事部・経営企画部の担当者に向けたページです。制度の全体像をこのページで押さえ、要件・手順・メリット・助成金・手引き・支援窓口の詳しい話は、それぞれの記事へ進んでください。

特例子会社とは:子会社の雇用を親会社の実雇用率にまとめる認定

子会社の雇用を親会社に合算。厚生労働大臣の認定で実雇用率を通算する

障害者の雇用義務は、本来は会社ごとに課されます。親会社と子会社であっても法人格が別なら別々に数えるのが原則です。この原則に例外を設けたのが特例子会社の制度で、障害者の雇用に特別の配慮をした子会社を設立し、厚生労働大臣の認定を受けると、その子会社で働く人を親会社が雇用しているものとみなして実雇用率を計算できます。

厚生労働省の資料「「特例子会社」制度の概要」によると、特例子会社の数は令和7年6月1日現在で631社、関係会社を含めて算定するグループ適用は394グループです。制度そのものは昭和51年に局長通達で始まり、昭和62年の法改正で法律に書き込まれ、昭和63年4月に施行されました(厚生労働省「特例子会社一覧」)。

資本関係の図:特例子会社のある企業グループの例

注意したいのは、「障害者をたくさん雇っている子会社」というだけでは特例子会社にならない点です。設立した会社が認定の基準を満たし、親会社と子会社の連名で申請して、認定を受けて初めて合算が始まります。つまり会社の設立と、雇用率の特例の認定は、別々の手続きとして進みます。

認定を受けた後も、要件は満たし続ける必要があります。法44条4項は、親会社が特殊の関係の要件を満たさなくなったときや、子会社が基準に適合しなくなったと認めるときに、厚生労働大臣が認定を取り消すことができると定めています。設立時の人数をそろえるだけでなく、退職や組織変更があっても基準を割らない運営の計画が要ります。

法定雇用率は、民間企業で令和8年7月から2.7%に上がり、雇用義務の対象となる事業主の範囲も常用労働者37.5人以上に広がりました(厚生労働省リーフレット、確認日:2026年10月18日)。特例子会社の検討が経営会議の議題に上がりやすいのは、こうした引上げの時期です。

特例子会社設立の要件:親会社の支配と、子会社の雇用・管理の体制

要件は親会社側と子会社側に分かれる。支配・人的関係・人数と割合・雇用管理の能力

認定の要件は、障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)44条に置かれています。条文は、子会社と親会社の「人的関係が緊密であること」、雇用する障害者の数と割合が厚生労働大臣の定める数・率以上であること、雇用管理を適正に行う能力があること、雇用の促進と安定が確実に達成されると認められること、の4つを基準にしています。

図:特例子会社設立の要件を二つの側から見る

数字の部分は、厚生労働省の概要資料で「雇用される障害者が5人以上で、全従業員に占める割合が20%以上」「重度身体障害者、知的障害者及び精神障害者の割合が30%以上」と示されています。大阪労働局の手引きは、子会社が株式会社であることも認定要件の一つに挙げています。

この見出しを詳しく:特例子会社 設立 要件認定要件を親会社・子会社の順に、条文と労働局の手引きで一つずつ確かめる

支配の判定が議決権の割合だけでは決まらない場合や、短時間で働く人の数え方、重度の障害者を二人分と数えない計算など、細かな判断は特例子会社設立の要件で、条文と労働局の手引きを並べて読み解いています。

特例子会社設立の方法:会社をつくる手続きと認定申請を二本の線で引く

設立と認定申請は別の線。登記で会社が生まれ、認定で雇用率の特例が始まる

会社をつくる部分の手順は、ほかの子会社とほとんど変わりません。親会社の中で方針を決め、出資の決裁を取り、定款を作り、資本金を払い込み、設立登記を申請します。違うのは、その横にもう一本、ハローワークへの相談から認定申請へ続く線が並ぶことです。

流れの図:特例子会社の設立から認定までの二本の線

厚生労働省の「事業主の方へ」のページには、申請書類として「子会社特例認定申請書」と「親事業主及び子会社の概要」の様式が掲載されています。ただし、要件を確かめるために、このほかの書類も出すよう求められています。

この見出しを詳しく:特例子会社 設立 方法社内の決裁、設立登記、採用、認定申請までを時系列で並べた手順

どの順番で何を準備するか、どこで線が交わるかは特例子会社設立の方法にまとめました。登記の申請代理は司法書士の業務なので、会社の設立部分は通常の子会社と同じく専門家と分担します。

見落としやすいのは、認定の効果が始まる時期です。大阪労働局の手引きによると、認定されると障害者雇用納付金制度の適用は認定申請をした年度の4月1日までさかのぼります。一方で、前の年度の4月1日までさかのぼる取扱いは令和3年度末で廃止されました。申請の時期を年度のどこに置くかは、親会社の納付金の計算にも響きます。

特例子会社設立のメリット:雇用率の算定と職場づくりの集中

メリットと引き受けるもの。算定の一本化と、別会社を運営する負担

厚生労働省の概要資料に並ぶ事業主側の利点を短くまとめると、仕事と職場環境を障害の特性に合わせやすい、定着が進み生産性が上がりやすい、設備への投資を一か所に集められる、親会社とは別の労働条件を組める、の四つです。

雇用率の面では、特例子会社を持つ親会社は、法45条の認定を受けると、特例子会社以外の関係会社も含めてグループ全体で実雇用率を算定できます。この関係会社特例を使うには、親会社が障害者雇用推進者を選任し、その人が子会社と関係会社の分も担当することなどが基準になっています。

事業の中身にも一つ制約があります。障害福祉サービスの就労継続支援A型事業は、運営の基準を定めた省令によって特例子会社が営めない事業とされており、大阪労働局の手引きもこの点に触れています。福祉の事業と組み合わせた構想を持っているなら、会社をつくる前に所管の窓口で確かめておきましょう。

特例子会社で得やすいもの

  • 障害の特性に合わせた職場と仕事の設計
  • 設備投資の集中
  • 親会社と別の労働条件

特例子会社で引き受けるもの

  • もう一社分の決算・申告・登記
  • 認定要件を保ち続ける管理
  • 親会社の各部門との仕事の受け渡し

この見出しを詳しく:特例子会社 設立 メリットメリットと注意点、グループ算定との違いを親会社の目線で比べる

「雇用率の達成だけが目的になると、職場が親会社から切り離されてしまう」という指摘もあります。メリットと注意点を並べた比較は特例子会社設立のメリットで扱っています。

特例子会社設立と助成金:名前より「今年度の一覧にあるか」を確かめる

助成金は年度ごとに変わる。令和8年度版の一覧と、廃止された名前を分ける

「特例子会社 設立 助成金」と検索すると、かつて存在した助成金の名前が今も目に入ります。特例子会社の設立そのものを対象にした助成金の名前を見つけても、まず今年度の一覧に載っているかを確かめてください。助成金は年度ごとに統廃合されるからです。

現在、障害者を雇用する事業主が使える助成金は、JEED(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構)が扱う障害者雇用納付金関係助成金と、厚生労働省・ハローワークが扱う雇入れの助成金に大きく分かれます。JEEDの「障害者雇用納付金関係助成金のごあんない」は令和8年度4月版が最新でした(確認日:2026年10月18日)。

助成金はどれも、措置を始める前の認定申請や事前相談が要件になっているものがあります。設立後に設備を買ってから調べると対象外になることがあります。申請手続きの代理は社会保険労務士の業務で、当サイトは代理・代行を行いません。

この見出しを詳しく:特例子会社 設立 助成金令和8年度の一覧と廃止された制度を、確認日つきで分けて整理

施設や介助に関係する助成金、雇入れの助成金、すでに廃止された制度の見分け方は特例子会社設立と助成金で原文の文言とともに確かめています。補助金や融資の一般論は、このサイトでは扱いません。

特例子会社設立のマニュアル:公的な手引きと社内の手順書を分けて持つ

手引きと手順書は別もの。公的資料で制度を学び、社内文書で段取りを決める

国が一冊にまとめた特例子会社の「設立マニュアル」は、2026年10月18日に厚生労働省とJEEDのページを確かめた範囲では見当たりませんでした。代わりに、厚生労働省の制度概要と申請様式、労働局の手引き、JEEDの雇用管理のマニュアル類が、それぞれ別の役割を受け持っています。

JEEDの「マニュアル・DVD等」のページには、「はじめての障害者雇用~事業主のためのQ&A~」、障害別の「障害者雇用支援マニュアル」、業種別・障害別の「障害者雇用マニュアル」、「職域拡大マニュアル」、「企業用自己診断チェックシート」などが並んでいます。これらは主に、採用から職場定着までの雇用管理の手引きです。

図:特例子会社設立で使う資料の役割分担

この見出しを詳しく:特例子会社 設立 マニュアル公的な手引きの読み方と、社内でつくる設立手順書の項目

公的資料をどの順で読むか、社内の手順書に何を書くかは特例子会社設立のマニュアルで整理しました。

特例子会社設立の支援:ハローワークとJEEDの窓口から始める

公的な支援窓口の地図。ハローワーク、地域障害者職業センター、JEEDの相談員

設立の相談は、公的機関でも受け付けています。JEEDの障害者雇用支援人材ネットワーク事業では、障害者雇用支援ネットワークコーディネーターが「特例子会社の設立・運営に関する相談・助言」を行うと明記しています。配置先は令和7年4月から東京・愛知・大阪の障害者職業センターと障害者職業総合センターです。

認定の要件や申請書類は、親会社の所在地を管轄するハローワークが窓口です。雇用管理の具体的な進め方は、各都道府県の地域障害者職業センターが事業主向けの支援をしています。どこに何を聞くかを先に整理しておくと、相談の回数を減らせます。

支援機関の数は、厚生労働省の「障害者雇用のご案内」(令和8年4月1日現在)で、ハローワークが全国544か所、地域障害者職業センターが47か所と5支所、障害者就業・生活支援センターが340か所と示されています。親会社の本社と、特例子会社の事業所が別の県にある場合は、どちらの窓口が担当かも最初に尋ねておきます。

この見出しを詳しく:特例子会社 設立 支援ハローワーク、地域障害者職業センター、JEEDのコーディネーターの役割分担

それぞれの窓口の役割と、相談の前に親会社で用意しておく資料は特例子会社設立の支援で扱っています。民間のコンサルタントや事務所の比較・紹介は、このサイトでは行いません。

上場会社と非上場会社で変わる、特例子会社設立の社内手続き

親会社の決議と開示を確かめる。付議基準と開示基準は会社ごとに異なる

親会社から見れば、特例子会社の設立も子会社の新設の一つです。親会社の取締役会で決めるかどうかは、会社法の重要な業務執行の考え方と、社内の取締役会規程の付議基準で判断します。出資額や事業の規模で付議の要否が変わるため、「必ず取締役会の決議が要る」とは言い切れません。

上場会社なら、東京証券取引所の適時開示の基準に当てはめる作業が加わります。特例子会社は小さな規模で設立されることが多いものの、基準への当てはめと記録は省けません。非上場会社なら、決議と議事録の整備が中心です。

もう一つ、社内で検討しておきたいのが「特例子会社を新しく設立しなくても足りるのではないか」という問いです。障害者雇用促進法45条の2は、特例子会社を持たない企業グループでも、親会社とすべての子会社の申請に基づいてグループ全体で雇用率を算定できる関係子会社特例(企業グループ算定特例)を定めています。

選択肢 新しい会社 合算の範囲
特例子会社を設立 要る 親会社+特例子会社(関係会社は別の認定)
企業グループ算定特例 要らない 親会社+申請した子会社
特例を使わない 要らない 会社ごとに算定

障害者雇用促進法44条・45条の2による整理。適用の可否はハローワークで確かめる

まとめ:特例子会社の設立は、会社づくりと認定の二本立てで進める

二本立てで進める。設立の段取りと認定の要件を同じ日程表に置く

ここまでの話を一言でいえば、障害者の雇用に配慮した子会社を設立し、厚生労働大臣の認定を受けることで、親会社の実雇用率に合算できる仕組みです。会社の設立と認定の申請は別の手続きなので、社内の日程表には二本の線を引いておきます。

  1. 雇用率の見通しを数字で出し、特例子会社か企業グループ算定特例かを比べる
  2. 親会社の付議基準(上場会社なら開示基準)に当てはめる
  3. 管轄のハローワークで認定要件を確かめる
  4. 設立登記と並行して、採用・施設・指導員を準備する
  5. 助成金は今年度の一覧と事前手続きを確かめる

厚生労働省の「特例子会社一覧」には全国の特例子会社が載っています。同じ業種・同じ地域の会社がどんな業務を担っているかを眺めるだけでも、自社の子会社に任せる仕事を考える材料になります。

検討の途中で迷ったら、「雇用率の数字」と「働く人にとっての職場」の両方から見直すことです。数字だけで設立を決めると、親会社から切り出す仕事が足りなくなり、認定の要件を保つのが難しくなります。子会社に任せる業務の量を先に見積もってから、設立の判断に進んでください。

次の一歩

まずは親会社の直近の障害者雇用状況報告書を開き、法定雇用率2.7%で何人の不足・超過になるかを計算してみてください。そのうえで管轄のハローワークに、特例子会社と企業グループ算定特例のどちらが自社グループに合うかを相談すると、設立の要否から議論を始められます。

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