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特例子会社 ・ 約10分

特例子会社の設立要件:親会社の支配・人的関係と子会社の人数・割合・管理体制を条文で確かめる

文:『子会社設立の実務ノート』編集部 / 掲載

この記事の前提
親会社上場・非上場の両方(支配の確認書類が異なる)
出資100%子会社を基本に、議決権40%以上50%以下の場合も注記
つくる先国内
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特例子会社の設立案を経営会議にかける前に、「うちのグループで要件を満たせるのか」を確かめたい親会社の人事・法務の担当者向けです。条文の4つの基準を、労働局が示す具体的な数字と書類に置き換えて、親会社側と子会社側の順に点検します。

SECTION 01特例子会社の設立要件は、条文の基準と手引きの数字の二段で読む

条文と手引きを並べて読む。法44条の4基準を、労働局が具体的な数字に落としている

要件の出発点は、障害者雇用促進法44条1項です。厚生労働大臣の認定を受けるための基準として、次の4号が並んでいます。一号は子会社と親会社の事業の「人的関係が緊密であること」、二号は障害者の数と割合が「厚生労働大臣が定める数及び率以上」であること、三号は雇用管理を「適正に行うに足りる能力」、四号は雇用の促進と安定が「確実に達成されると認められること」です。

条文には「5人」や「20%」といった数字は出てきません。数字は厚生労働大臣が定めることになっていて、実務では厚生労働省の概要資料や、各労働局が出している手引きで具体的な水準を確かめます。このページでは大阪労働局の「障害者雇用率制度における雇用率算定特例」(令和8年7月1日版の表記)を主な手引きとして使います。

図:特例子会社設立の要件:条文と具体的な水準

柱書の「特殊の関係」は、親会社が子会社をどれだけ支配しているかの話です。したがって要件は、親会社と子会社の関係に関するもの(支配・人的関係)と、子会社の中身に関するもの(人数と割合・管理体制・事業の安定)の二つに分けると整理しやすくなります。特例子会社の設立準備で担当部署を割り振るときも、この二分が役に立ちます。

要件を読むときの心構えとして、条文の「認められること」「能力を有するもの」という言い回しは、書類の形式だけでなく実態を見て判断されることを意味します。様式の欄を埋めることより、欄に書く中身を実際につくることを先に考えてください。制度全体の位置づけや、設立の手順・助成金などの周辺の話は特例子会社 設立の棚にまとめています。ここでは要件の点検に集中します。

SECTION 02親会社側の要件①:子会社の意思決定機関を支配していること

議決権でみる支配の判定。過半数なら持株基準、40%以上は追加の事実が要る

大阪労働局の手引きは、「意志決定機関を支配」の判定を、連結決算の対象となる子会社の判定基準(いわゆる支配力基準)と同様だと説明しています。いちばん分かりやすいのは、親会社が子会社の議決権の過半数を持つ場合(持株基準)です。100%子会社として設立するなら、この点で迷うことはまずありません。

合弁や共同出資で特例子会社を設立する場合は、議決権が過半数に届かないことがあります。手引きによると、議決権の40%以上50%以下でも、親会社の役員・使用人やその経験者が子会社の取締役会等の構成員の過半数を占める、重要な方針の決定を支配する契約がある、資金調達額の総額の過半について融資・債務保証・担保提供をしている、といった事実のいずれかがあれば、支配が認められるとされています。

持株基準
議決権の過半数を所有している
40%以上50%以下
取締役会の過半数・支配契約・資金調達の過半などのいずれか
40%未満
緊密な者・同意している者と合わせて過半数+上記のいずれか
孫会社
持株基準での子会社の子会社も支配に含めて扱う

支配を示す書類として、手引きは親会社の直近の有価証券報告書(写)または附属明細書(写)と、特例子会社の株主名簿を挙げています。上場会社なら有価証券報告書、非上場会社なら附属明細書と株主名簿で示す、という違いが生じます。出資比率を決める段階で、この書類で説明できる形になっているかを確かめておくと安心です。

共同出資の相手先がある場合は、もう一つ確かめることがあります。どちらの会社が親事業主として認定を申請するのか、相手先の雇用率の計画とぶつからないかを、株主間の契約や協議の記録で明確にしておくことです。支配の判定に迷う出資構成なら、設立前に弁護士とハローワークの両方へ確かめるのが確実です。

SECTION 03親会社側の要件②:役員の選任や出向で人的関係を緊密にする

親会社と子会社をつなぐ人。役員1名以上、または相当数の従業員の派遣

法44条1項一号の「人的関係が緊密」について、大阪労働局の手引きは具体的な目安を二つ示しています。一つは、特例子会社の役員のうち少なくとも1名以上が親会社の役員または従業員から選ばれていること。もう一つは、特例子会社の従業員のうち相当数が親会社から派遣されていることで、どちらかを満たせばよいとされています。

申請書類の「親事業主及び子会社の概要」(様式第6号の6)には、子会社の役員のうち親会社から選ばれた人の数と割合、従業員のうち親会社から派遣された人の数と割合を書く欄があります。記入例では、親会社出身の代表取締役と常務取締役、総務部長などの出向者が書かれています。

人的関係を示しやすい形

  • 親会社の部長が子会社の取締役を兼ねる
  • 管理職を出向で送り、指導の体制をつくる
  • 親会社の人事部と定例の会議を持つ

説明が難しくなりやすい形

  • 役員も管理職も外部からだけ採用する
  • 親会社との行き来が書類上しかない
  • 出向者が設立直後にすぐ全員戻る

人的関係は書類の上の要件にとどまりません。親会社の業務を特例子会社が受託するなら、仕事の受け渡しの窓口になる人が両社にいることが欠かせないからです。出向者の人選と出向契約の条件は、設立登記より前に決めておく項目の一つです。

役員を兼務させる場合は、兼務する人が子会社の取締役として子会社の利益のために判断する立場にも立つ点を忘れないでください。親会社からの発注の単価や条件を決める場面では、両社の取締役を兼ねる人が一人で決めない手続き(別の役員の承認や議事録への記録)を設けておくと、後から説明しやすくなります。

SECTION 04子会社側の要件①:株式会社で、障害者5人以上・全従業員の20%以上を雇う

株式会社で5人以上・20%以上。合同会社は対象外。人数と割合の両方を満たす

子会社の側でまず確かめたいのは、会社の種類です。法44条は「特定の株式会社」と書いており、大阪労働局の手引きも認定要件の最初に「株式会社であること」を掲げています。特例子会社の設立で合同会社を選ぶと要件を満たせないので、会社の形を決める段階で注意してください。

次に人数と割合です。厚生労働省の概要資料は「雇用される障害者が5人以上で、全従業員に占める割合が20%以上であること」としています。人数と割合はどちらか一方ではなく両方が必要です。たとえば従業員30人の子会社なら、障害者が6人以上いて初めて割合の基準に届きます。

割合の分母になる全従業員には、親会社からの出向者も含まれます。管理のために出向者を厚くすると、そのぶん障害者の割合が下がる点は見落としやすいところです。指導員の人数と割合の基準を同じ表で検算してから、組織図を確定させましょう。

人数の基準は、設立したその日ではなく、認定の申請をする時点と、その後の運営の各時点で満たしている必要がある点も意識しておきます。採用は数か月かけて段階的に進むことが多いため、「何月に何人」という採用の線表と、要件を満たす月を同じ日程表に置いておくと、申請の時期を決めやすくなります。

チェックリストの図:人数と割合の要件を確かめる

SECTION 05子会社側の要件②:重度身体・知的・精神の障害者が30%以上、数え方に注意

認定の数え方は雇用率と違う。重度のダブルカウントをしない。短時間は0.5人

人数と割合に加えて、雇用される障害者のうち、重度身体障害者・知的障害者・精神障害者の合計が30%以上であることも要件です。身体障害のある人だけを採用する計画では、この基準に届かないことがあります。採用計画を立てるときに、障害の種類と程度の内訳まで見込んでおく必要があります。

ここで混乱しやすいのが数え方です。雇用率の計算では、重度身体障害者・重度知的障害者を2人分と数えたり、週20時間以上30時間未満の精神障害者を当分の間1人と数えたりする特例があります(厚生労働省リーフレット)。ところが大阪労働局の手引きは、認定要件の算定では「重度障害者のダブルカウントは行いません」と明記しています。

区分 雇用率の算定 特例子会社の認定要件
重度身体・重度知的(常時) 2人分 1人
短時間労働者 原則0.5人 0.5人
精神障害者(短時間) 1人(算定特例) 1人
特定短時間労働者 対象者は0.5人 0.5人

大阪労働局の手引き(R80701)と厚生労働省リーフレットによる。確認日:2026年10月18日

同じ従業員名簿から、雇用率用と認定要件用の二つの数字を出すことになります。人事システムで集計するなら、二つの数え方を別の列で持たせておくと、毎年の報告や認定後の点検で取り違えを防げます。

障害の種類と程度は、本人の障害者手帳などで確かめます。手引きの添付書類にも、障害種別・等級が確認できる書類が挙がっています。ただし、手帳の情報は本人のプライバシーに深く関わるため、確認の目的と管理の方法を本人に説明し、扱う人を限ることが前提です。厚生労働省は、プライバシーに配慮した障害者の把握・確認のガイドラインも公表しています。

SECTION 06子会社側の要件③:施設の改善と専任の指導員で雇用管理の能力を示す

施設と人で示す管理の力。バリアフリー化と、相談員・ジョブコーチの配置

三号の「雇用管理を適正に行うに足りる能力」は、厚生労働省の概要資料で「障害者のための施設の改善、専任の指導員の配置等」と具体化されています。申請書の様式でも、障害者のために配慮した施設・設備(ハード面)と、雇用管理上の配慮(ソフト面)を分けて書く欄が設けられています。

ソフト面の中心になるのが、障害者職業生活相談員です。JEEDによると、5人以上の障害のある労働者を雇用する事業所では、資格を持つ労働者の中から障害者職業生活相談員を選任し、職業生活全般の相談・指導を行うよう法律で義務づけられています。特例子会社は障害者5人以上が要件なので、設立時点からこの選任が視野に入ります。

資格の取り方の一つが、JEEDの「障害者職業生活相談員資格認定講習」の修了です。講習の日程は限られるので、相談員候補の社員を早めに決めて受講させておくと、設立の日程に間に合わせやすくなります。申請時には選任届などで配置状況を示します。

ハード面の改善は、障害の種類によって必要なものが大きく変わります。車いすを使う人がいるならスロープや通路幅、聴覚に障害がある人がいるなら視覚的な合図、知的障害や精神障害のある人が多いなら作業手順の見える化や静かな休憩場所、というように、採用計画の内訳から逆算して改善の項目を決めます。

図:雇用管理の能力を示す材料

SECTION 07要件④の「確実な達成」と、要件を割り込んだときの取消し

認定後も要件を保つ。親会社の発注と、取消しの条文

四号は、雇用の促進と安定が「確実に達成されると認められること」という包括的な基準です。様式第6号の6では、親会社から子会社への発注など、親会社が子会社の経営の安定のために講じている措置を書く欄がこれに対応しています。記入例には、本社の清掃や印刷、社員の厚生業務の受託が挙がっています。

認定は一度受ければ終わりではありません。法44条4項は、親会社が特殊の関係の要件を満たさなくなったときや事業を廃止したとき、子会社が各号の基準に適合しなくなったと認めるときに、厚生労働大臣が認定を取り消せると定めています。大阪労働局の手引きも、こうした場合には公共職業安定所へ連絡するよう求めています。

設立直後は要件を満たしていても、退職が重なれば5人を割ることがあります。親会社の組織再編で持株比率が変わることもあります。要件ごとに「下回りそうになったら誰が気づくか」を決め、毎月の人事データで人数と割合を確かめる仕組みを、設立の準備と一緒に作っておきましょう。

名称や所在地の変更、事業所の廃止があるときも、親会社の管轄のハローワーク所長あてに速やかに届け出るよう手引きは求めています。特例子会社の本店移転や商号変更を決めるときは、登記の手続きと一緒に、この届出を社内の手順に組み込んでおきます。

Q. 設立したばかりで障害者がまだ5人そろっていない場合、先に認定を申請できますか

A. 認定の要件は申請の時点で満たしている必要があるため、採用が進んでから申請する流れが一般的です。具体的な時期は、親会社の所在地を管轄するハローワークに確かめてください。

SECTION 08まとめ:特例子会社の設立要件は、親会社と子会社で担当を分けて点検する

担当を分けて点検する。支配と人的関係は親会社、人数と体制は子会社

特例子会社の要件は、親会社と子会社の関係(支配・人的関係)と、子会社の中身(株式会社であること、人数と割合、障害の内訳、雇用管理の能力、経営の安定)に分けて読むと、点検の担当を決めやすくなります。支配と人的関係は親会社の法務・人事、人数と体制は設立準備の担当が受け持つのが自然です。

  1. 出資比率と、支配を示す書類(有価証券報告書または附属明細書・株主名簿)を決める
  2. 親会社から出す役員・出向者を決める
  3. 株式会社として設立する
  4. 5人以上・20%以上・30%以上を認定用の数え方で検算する
  5. 相談員の選任と施設の改善計画をまとめる
  6. 認定後の点検の担当を決める

数字の水準は、厚生労働大臣が定めるものとして変わる可能性があります。とくに法定雇用率は令和8年7月に2.7%へ上がったばかりで、関連する資料の改訂も続いています。設立の検討資料には確認日を書き、申請の前に厚生労働省のページと管轄のハローワークで最新の内容を確かめてください。

手元の採用計画と組織図を並べ、出向者も含めた全従業員の数と、障害の種類ごとの人数を認定用の数え方で表にしてみてください。表ができたら、管轄のハローワークで要件の読み方に誤りがないかを確かめ、支配の判定に迷う出資構成なら弁護士にも相談しておくと安心です。

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